第1回 医療情報ネットワークシステム検討特別委員会
7月27日 府医師会館
情報ネットワークシステムの構築について
今や、国を挙げての株式会社の医療分野への参入が進められようとしている。我々
は、国民の健康と医療を資本主義的な利益追求の場にしてしまう流れを容認するわけ
にはいかず、徹底的に反対してゆかなければならないし、日医、府医ともに日常活動
として市場主義の医療への進出に対抗してゆかねばならない。しかし、市場原理主義
者が国やマスコミを通じて訴えていることも、医療の国民のためのサービスとしての
効率化や情報公開である。また、現在、意図されている株式会社参入や混合診療の導
入も、今の勢いでは、参議院選挙の結果次第であるが、阻止しきれない可能性も強い。
特に、マスコミなどに意図的に誘導されているかとも思われる国民の医療に対する不
満についてのアンケート調査結果も次々と出され、医療側は防戦一方の状況である。
アンケート結果については、我々医療側だけの責任ではなく日本が世界に誇るべき医
療保険制度の利点の裏腹としての不満であることも多く含まれているが、我々医療に
従事するものとしても極力答えてゆかなければ課題もあり、現状は、国民の期待に十
分応えられたとは言い切れないのも事実であろう。
一方、我々医療に従事するものとして、他の企業が過去取り組んで、製品の質の向
上と効率化を図り、世界的な競争力をつけてきたように、医療の質の向上と患者ニー
ズへの対応も必要であろう。また、現在、大病院が生き残りをかけて取り組んでいる
病診連携ネットワークの構築は、我々医療人が一致団結しすべての国民に最善の医療
を提供し、診療所におけるかかりつけ医として提供する医療と、必要なときに必要な
検査や治療を実施できる病院、高度先進医療を提供できる大病院などとの連携を深め
ることにより、患者さんに先進の医療をくまなく提供できる体制を構築することが出
来ると考えられる。また、そのような連携を進めることが、現時点で世界一といわれ
る日本の医療制度をさらに進展させ、株式会社などの営利企業から国民の健康と医療
を守ることになり、内閣府、市場原理主義者の動きから国民を守ることになるのでは
ないだろうか。
このような地域医療連携ネットワークは、以前からその必要性が強く認識され、い
ずれ取り組まなければいけないとの認識はあった。しかし、地域医療連携システムは
常にIT化と一体の物として取り上げられることが多く、システム構築の必須アイテ
ムとしての電子カルテシステム導入が叫ばれるため、大病院では導入コスト、ランニ
ングコストの面から、診療所では、デジタルデバイドによる高齢者の会員の拒否反応
等々からなかなか進展してこなかった。しかしながら、大病院へのクリニカルパスの
導入や昨年からのDPC導入などとともに、国立大学・病院の独立行政法人化など、
大病院を取り巻く環境も大きく変化し、病院にとっては、診療所との連携を密にし患
者を取り込むことや、入院と外来機能の分離など、病院の生き残りをかけた取り組み
を行わざるを得ない状況に追い込まれてきている。
一方、大病院は、経営面から、国の地域医療支援病院推進策にのり地域医療支援病
院への取り組みが進められている。地域医療支援病院を標榜するためには、紹介率の
アップが不可欠であり、入院期間短縮による医療収入の向上とにより、入院期間が短
縮される。そのため、受け皿としての診療所での外来機能の向上と在宅医療、介護と
の連携の促進が必須となる。従って、病院としても、診療所機能の把握が必要であり、
病院・診療所ともにお互いの診療内容の情報提供が要望されてくる。
また、今後の政局にも大きく左右されるが、株式会社の医療参入などが行われた場
合の対応策として病院との病診連携、中小病院と大病院との病病連携などを進めてお
くことは、患者さんを地域医療ネットワークの中で医療を完結させることにより、我々
の提供する医療体制の中で十分な満足度を与えることにより、世界に誇る日本の医療
制度をより強固なものとすることが可能である。さらに、貧富の差により提供される
内容が異なるという不平等な医療制度から国民を守ることが出来るものと考える。そ
のためには、従来以上に積極的な各医療機関の機能を情報提供し、患者さんに対し適
切な必要十分な医療を提供するための取り組みが要求される。
今回の委員会では、以上のような基本的スタンスから、すでに、地域の基幹病院と
の連携システムを構築された地区医師会での状況を整理し、今後、他地域でも推進さ
れるであろうネットワーク構築についての指針と理想的なシステムを提示することに
より、すでにシステムを構築された地域でもさらにそのシステムの向上をもたらし、
府内全域でのあるべき医療システムについて検討してゆきたい。
今後の委員会では、以下の点について調査・検討し一定の方向性を出せたらと考えて
いる。
1.なぜ必要か
2.どのような内容での連携を行うか
3.主体をどうするか
4.各地区での実情報告
5.他府県の状況
6.ネットワーク形成の手段をどうするか
7.各地区医師会への連携システムについてのアンケート調査
8.地区医師会の役割は
9.府医の役割は
10.医療・保険・福祉の分野までの連携を
11.IT化との関連